忘れない

この本はいつ読んでも新しい何かに出会う。
それは、今読んでいる私が以前の私とは違うから新しいと感じるのか、それとも読んだのに記憶に残せていなかったか、そのどちらかなんだけれど。

数年前にこの本が読みたくて、近くの本屋できっと見つかるからと言われて寄った。
自分ではなかなか見つけられなくて、仕方なく店員さんに尋ねると、一瞬の躊躇もなく、真っ直ぐにその場所を教えてくれた。
本屋さんの店員たるもの、こうでなければいけないのかもしれねい。

その時にかけてもらったカバーを今も変わらずかけている。
破れてきたけれど、それでも使う。
今はその本屋もなくなってしまった。
だから、あえてそのままにしてある。

本屋が閉店するその日、長年その本屋に通っていたであろう人たちが朝から店の前に集まっていた。
写真を撮っている高齢の男性もいた。
じっと見つめて立ち尽くす人もいた。
長いことそれぞれの方の人生に寄り添ってきたんだろう。
街の人に愛されてきた本屋は、惜しまれつつも閉店した。
そんな本屋でやっと手にしたこの本には深い愛着がある。


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